今回はグローバルグループBTSの楽曲『SWIM』のOfficial Music Videoの動画から、リアルな英語表現を学びます!
本作『SWIM』は、水中に潜るような浮遊感のあるチルなサウンドと心地よいメロディが印象的な楽曲です。過酷な現実(”mad world”)から抜け出し、愛する存在や自分の世界へ深く没頭していく切なくも開放的なストーリーが描かれています。
- テキスト上の難易度: 英検準2級 / TOEIC 500点程度(使われている語彙や文法自体はシンプルで、基礎的な単語が中心です)
- レベル目安(リスニング体感難易度): 英検2級 / TOEIC 650点程度(
ain't gottaやwannaなどの口語略語に加え、cold feet(おじけづく)といった慣用表現が含まれます。さらにメロディに乗せた音の脱落や連結(リンキング)が多いため、テキストで読む以上にリスニングの体感難易度は高くなります)
発音・音声変化のメカニズム
楽曲の象徴的なフレーズである『This is how it all begins(動画内 00:44)』。
文字通りの「ディス・イズ・ハウ・イット・オール・ビギンズ」ではなく、実際には「ディスィズ・ハウイロール・ビギンズ」のように変化して聞こえるのは、英語特有の単語の連結(リンキング)とTの弾音化(フラップT)によるものです。
1. 単語の音が滑らかに繋がる「単語の連結(リンキング)」
英語では、前の単語の末尾子音と次の単語の先頭母音が隙間なく結びつき、まるで1つの単語のように発音される「リンキング(Linking / Catenation)」が頻繁に起こります。
『This is how it all begins』を分解して、音の繋がりを見てみましょう。
- Step 1: This /ðɪs/ + is /ɪz/
This の末尾子音 /s/ と is の先頭母音 /ɪ/ が合体。This + is=ディスィズ (/ðɪ.sɪz/)に変化します。 - Step 2: how /haʊ/ + it /ɪt/ + all /ɔːl/
how から it へ滑らかに音が渡り、さらに it の末尾 /t/ と all の先頭母音 /ɔːl/ が直結。how + it + all=ハウイットール(さらに後述のフラップ化で変化)へ繋がります。
この変化によって単語ごとの区切り(空白)が消え、流れるようなスピード感とメロディに乗るグルーヴが生まれます。
2. 「T」が日本語の「ら行」に化ける「Tの弾音化(フラップT)」
アメリカ英語を中心に、母音に挟まれた位置にある「T」は、破裂させずに舌先で上あごを軽く弾く「弾音(フラップT / /ɾ/)」へと変化します。
- 「it all」が「イット・オール」ではなく「イロール」になる理由
it の「T」は、直前の母音(it の /ɪ/)と直後の母音(all の /ɔː/)に挟まれる環境にあります。息を破裂させて「トゥ」と発音するのではなく、舌先を上あご(歯茎)に軽く触れさせるだけにとどめるため、/t/ から [ɾ] に変わり、all と連結して「イロール (/ɪ.ɾɔːl/)」と発音されます。 - 実は英語特有の音ではなく日本語の音に近い!
フラップTの舌の動きは、日本語で「ラリルレロ」と軽く発音するときの舌のタッチとほぼ同じです。「T」を意識して発音を止めず、脱力して日本語の「ラ行」の感覚で発声すると、一気にネイティブらしい音に変わります。
3. 口ずさんで身につける!類似フレーズ・発音一覧
同じ音声変化(リンキング + フラップT など)は、洋楽や日常会話の定番フレーズでも頻出します。音のリズムを意識しながら声に出して練習してみましょう。
| 英語フレーズ | カタカナ表記のイメージ | 音声変化の仕組み |
|---|---|---|
| This is how it all begins (本楽曲 00:44) | ディスィズ・ハウイロール・ビギンズ | 連結(This is)+ 母音挟みのTの弾音化・連結(it all) |
| Let it all begin (本楽曲 03:06) | レリロール・ビギン | Tの弾音化・連結(Let it all → /le.ɾɪ.ɾɔːl/) |
| Take it off the ground (本楽曲 01:45) | テイキロフ・ザ・グラウンド | 連結(Take it)+ Tの弾音化・連結(it off → /ɪ.ɾɔːf/) |
| Not at all (定番日常表現) | ナラロール | 2連続の母音挟みによるTの弾音化 + 連結(/nɑː.ɾə.ɾɔːl/) |
発音・歌い方のコツ
子音の「T」で息を止めたり強く弾いたりせず、舌先を上の前歯の付け根に「ポンッ」と軽く当てる程度に脱力するのがポイントです。「ディス・イズ・ハウ・イット・オール」と単語ごとにぶつ切りにせず、1つの長い単語「ディスィズハウイロール」を一息の息の流れに乗せて発声すると、楽曲本来のグルーヴを再現できます。
重要単語・フレーズ解説
動画に出てくる重要な語彙や、知っておくと表現の幅が広がるスラング・難単語をピックアップして解説します。
表現①:goody goody(動画内 0:57)
- 意味・ニュアンス
-
「いい子ぶる人」「優等生ぶっている人」「偽善者」
周囲に気に入られようとして過度に「良い子」を演じている人や、少しお堅くて面白みのない優等生タイプを、やや揶揄(バカにした)ニュアンスを含んで指す日常口語表現です。
学校英語では good person や well-behaved と習いますが、ネイティブの日常会話では同じ単語を重ねて goody-goody(または goody two-shoes)と表現します。歌詞の “Lookin’ like a goody goody in this bad world” は、「こんなろくでもない世界で、一人だけいい子ちゃんぶっているように見える」という葛藤や皮肉を巧みに表しています。
一言フレーズ(活用例):
Stop acting like a goody goody in front of the boss.
上司の前でそんなにいい子ぶるなよ。
表現②:where the hell you at(動画内 1:02)
- 意味・ニュアンス
-
「一体全体どこにいるんだよ?」
相手の居場所を強く問いただす際や、焦り・混乱・探している気持ちを感情的に強調するスラング表現です。
文法的には Where the hell are you at? や Where the hell are you? となるのが教科書通りですが、ストリート英語やヒップホップの歌詞では be動詞の are が省略され、文末に at が付く Where you at? という形が頻繁に使われます。さらに感情を強める the hell(一体全体)が挟み込まれた、非常にリアルなネイティブの口語表現です。
一言フレーズ(活用例):
I’ve been waiting for an hour, where the hell you at?
1時間も待ってるんだけど、一体全体どこにいるの?
表現③:ain’t gotta(動画内 1:05)
- 意味・ニュアンス
-
「〜する必要なんてない」「〜しなくていい」
don't have toやdon't need toを非常にフランクにした日常会話のスラング表現です。
ain't は am not / is not / are not / have not / has not の万能な口語・スラング体です。また gotta は have got to(〜しなければならない)の縮約形です。したがって ain't gotta は don't have to(〜する必要はない)と同義になります。歌詞の “you ain’t even gotta love me bad” は「僕をそんなに激しく(強く)愛さなくたっていいんだよ」という心理的アプローチを示しています(ここでの bad は口語・スラングで badly[とても、激しく、強く]を意味する副詞的用法です)。
一言フレーズ(活用例):
You ain't gotta worry about that, I got this.
そんなの心配しなくていいよ、僕に任せて。
表現④:get cold feet(動画内 1:46)
- 意味・ニュアンス
-
「直前で怖気づく」「二の足を踏む」「土壇場で腰が引ける」
大事な決断や行動(結婚、プレゼン、勝負など)を目の前にして、急に不安になり逃げ出したくなる心理状態を表す定番の慣用句(イディオム)です。
直訳すると「足が冷たくなる」ですが、緊張や恐怖で血の気が引き、足が竦んで動けなくなる様子から生まれた比喩表現です。歌詞の “I ain’t never gettin’ cold feet” は二重否定(ain’t never)を使った強い強調で、「俺は絶対に日和ったり怖気づいたりしない」という力強い覚悟を示しています。
一言フレーズ(活用例):
He got cold feet right before making the big speech.
彼は大切なスピーチの直前で急に怖気づいてしまった。
表現⑤:stunnin’ [stunning](動画内 1:58)
- 意味・ニュアンス
-
「息をのむほど美しい」「格好良すぎて痺れる」「圧倒的な」
外見の美しさや存在感が非常に際立っており、一瞬で目を奪われて言葉を失うような状態を表す感嘆の褒め言葉です。
動詞 stun(気絶させる、呆然とさせる)から派生した形容詞です。学校英語で習う beautiful や gorgeous よりも「一目見てハッとさせられるような衝撃的な美しさ」というニュアンスが強く含まれます。口語やSNSでは末尾の -g が脱落して stunnin' と表記・発音されることがよくあります。
一言フレーズ(活用例):
You look absolutely stunnin' in that dress tonight.
今夜のドレス姿、息をのむほど本当に素敵だよ。
表現⑥:make waves(動画内 2:35)
- 意味・ニュアンス
-
「波風を立てる」「物議を醸す」「大きな話題・変化を生み出す」
平穏な状況に刺激や風穴を空けたり、業界や世の中に大きな影響や流行(波)を作り出したりすることを意味する比喩表現です。
文字通りには「水面に波を作る」ですが、慣用句として2つのニュアンスがあります。1つは「トラブルや波風を起こす」という文脈、もう1つは「大きな旋風を巻き起こす・界隈を揺るがす」というポジティブな文脈です。海や泳ぎをテーマにしたこの楽曲(SWIM)では、ヒレ(fins)を使って文字通り波を起こす描写と、世の中にムーブメントを起こす比喩が巧みに掛け合わされています。
一言フレーズ(活用例):
The new artist is making waves in the music industry.
その新人アーティストは音楽業界で大きな波風(旋風)を巻き起こしている。
ピックアップ英文・構文解説
動画の重要シーンから、知っておくと役立つ英文やネイティブ特有のセリフを厳選し、詳しく解説します。
英文:I could spend a lifetime watching you(動画内 0:39)
日本語訳:君をただ見つめながら、一生だって過ごせるよ。
文法構造と繊細な感情表現が凝縮された非常にロマンチックな一文です。
could(仮定法): ここでのcouldは単なる過去形ではなく、「(もし許されるなら)〜できるだろうな」という控えめで非現実的なニュアンスを含んだ仮定法です。spend + [時間] + [V-ing]構文:spendの後ろに時間(a lifetime= 一生)を置き、その後に現在分詞(watching you)をつなげることで、「〜しながら[時間]を過ごす」という意味になります。
全体として I could spend [a lifetime] (watching you) という構造になっており、学校英語でも頻出する重要な構文です。
英文:This is how it all begins(動画内 0:44)
日本語訳:こうやって、すべてが始まるんだ。
日常会話からニュース、楽曲の歌詞まで幅広く使われる「関係副詞 how」を用いた定番構文です。
This is how S V: 「このようにしてSはVする」「これがSがVする方法だ」という意味を表します。先行詞のthe wayが省略された形、あるいは関係副詞howが名詞節を作っていると考えます。it all: 代名詞itの直後にallを置いて補足し、「それらすべて」「あらゆること」を強調しています。
物語や新しい展開の始まりを告げる際にそのまま使える、非常に実用的なフレーズです。
英文:I can feel the high waves comin’(動画内 1:53)
日本語訳:高い波が押し寄せてくるのを感じるよ。
感覚器官を使った表現である「知覚動詞」の基本的な用法です。
- 知覚動詞の構文
feel + O + V-ing:feel(動詞)+the high waves(目的語 O)+comin' [coming](現在分詞 V-ing)の構造で、「Oが〜しているのを(肌で)感じる」という意味になります。原形不定詞(come)ではなく現在分詞(coming)が使われているため、「波が今まさに近づいてきている臨場感・進行感」が際立っています。 comin':-ingの末尾のgが脱落した口語・歌詞独特の発音表記です。
英文:Under here we don’t chase the time(動画内 2:43)
日本語訳:ここ(水中)では、僕たちは時間に追われたりしない。
曲の世界観とネイティブの感覚的な発想が光る、詩的かつ口語的な表現です。
Under here: 直訳すると「ここ(水面)の下で」となります。現実世界の陸上(land)と対比させて、自分たちだけの安全な空間(水の中)を表現しています。chase the time: 直訳は「時間を追いかける」ですが、日本語の「時間に追われる」「時間に縛られる」に近いニュアンスを持ちます。否定文のdon't chase the timeにすることで、「時間やスケジュールに追われる慌ただしい日常から解放されている」という自由で穏やかな感覚を表しています。
応用トレーニング
今回登場した表現の中から、日常やビジネスでも特に使い回しやすい重要表現 get cold feet(土壇場で怖気づく・二の足を踏む)をピックアップし、動画以外のシチュエーションでの活用パターンを解説します。
動画では「深い水中に潜り込む際にも、俺は絶対に日和ったり怖気づいたりしない(”I ain’t never gettin’ cold feet”)」という力強い決意を表す文脈でしたが、この表現は日常の様々な場面でそのまま応用できます。
使い方の型: get cold feet(動詞 get + cold feet)の形で使います。主語+get cold feet(怖気づく)や、get cold feet about + 名詞/動詞ing(〜について二の足を踏む)のように表現します。過去形(got cold feet)や進行形(getting cold feet)でも頻繁に登場します。
パターン①:【ビジネス・仕事】重要な契約や交渉の直前
- 例文:
We were about to sign the contract, but the client got cold feet at the last minute. - 訳: 私たちは契約にサインする直前でしたが、クライアントが土壇場で怖気づいてしまいました。
- ポイント: ビジネスシーンで、取引や投資の決定直前に相手(または自分)が不安になり躊躇・辞退してしまう状況を伝えるのに最適な表現です。
パターン②:【日常会話・買い物】高額な買い物や大きな決断
- 例文:
I was planning to buy a new car, but I got cold feet when I saw the final price. - 訳: 新しい車を買う予定でしたが、最終的な価格を見て二の足を踏んでしまいました。
- ポイント: 高価な買い物や旅の予約など、思い切った決断をする直前に「やっぱりやめようかな…」と迷う気持ちをリアルに描写できます。
パターン③:【イベント・個人的な挑戦】大勢の前での発表やステージ
- 例文:
She was supposed to give a speech in front of hundreds of people, but she got cold feet. - 訳: 彼女は数百人の前でスピーチをする予定でしたが、直前で緊張して怖気づいてしまいました。
- ポイント: 元々は結婚式直前のマリッジブルーを表す有名なイディオムですが、大舞台でのプレゼンやスピーチなどプレッシャーがかかる挑戦の場面でも広く使われます。
まとめ:今日出てきた重要表現リスト
今回の『BTS – SWIM』で学んだ表現です。動画の音に合わせて口に出して復習してみましょう!
- goody goody:いい子ぶる人、優等生ぶっている人
- where the hell you at:一体全体どこにいるんだよ?(感情を強調する口語表現)
- ain’t gotta:〜する必要なんてない(don’t have toのフランクな表現)
- get cold feet:直前で怖気づく、二の足を踏む
- stunnin’ [stunning]:息をのむほど美しい、圧倒的な
- make waves:波風を立てる、大きな話題・変化を生み出す
💡 この動画の活用アドバイス
浮遊感のあるチルなサウンドに乗せて、音の連結(リンキング)や語尾の脱落(stunnin'等)を体感できる楽曲です。ボーカルの音源にぴったり声を重ねる「オーバーラッピング」を行い、リズムに乗せたネイティブ特有の脱力感のある発音と口語表現を口に馴染ませていきましょう。



コメント